2020年の一発目の大きすぎた本番、Palette!が終演した。
cafe音と友にでの演奏は2回目で、前回は9月末に「変化するヴィルトゥオジティ」と題したコンサートを持ち込ませていただき、それはそれは準備に苦労した。が、結局今回も前回を上回りそうな勢いの充実したプログラムとなり、年末年始など休む暇もなかった。それは幸せなことではあるが、なかなか2020年初っ端から盛り上がりのある本番だった。
今回共演した三塚汐莉さんは高校時代の同期で、共演は7年ぶりだった。本番中MCで8年ぶりと言ったが、計算を完全に一年分ミスしていた。実は7年「半」ぶりの共演。四捨五入で8年ということにしていただきたい。
さて、今回はpalette!と題し、サクソフォンとピアノ、2つの楽器からいかに多種多様な発音や音色を作り出していくか、をプログラミングの段階から強く意識し選曲していった。
結果的には小品から規模の大きな作品、そしてサクソフォンとピアノのためのオリジナル作品から、他楽器のためのレパートリーをも含む、大変幅の広いプログラムとなった。
正直、paletteなんていう洒落た題名を付けたとしても、前回のヴィルトゥオジティに引き続きあまりにも安直すぎないかと自分では思っており、もう少し凝った、かつお客様に興味深く楽しんで頂けるものが用意できたらと常々思うものの、思うばかりで自分の未熟さを痛感する日々であった。
しかし、手前味噌ながら各楽器の特性を反映するような発音方法、ヴィブラート、フィンガリングやブレスの癖などを楽器の特徴に合わせてトレースしていくことで見えていく音楽というものもあり、サクソフォンで演奏しているにも関わらず少しは他の楽器の「モノマネ」くらいは出来たのではないかとは思っている。
この、「トレース」「ものまね」といった問題は他楽器のレパートリーを取扱う際に、重要で、かつ答えのない難しい問題のように捉えてしまうが、結局は本当にその曲が好きならば、トレースうんぬんの前に作曲家と作品に対し敬意を持って演奏していれば(そして演奏のマナーに沿っていれば)それほど大した問題ではないようにも感じた。独り善がりだろうか。
音楽の色彩というものは、我々が想像する限り無限に広がっていくものであると思う。
パレットの上で、おそらく2度と同じ色は作れないように、それは演奏者と聴衆のコミュニケーションや、もちろん演奏者同士の音色の混合など、様々なことで同じことが言えると思う。
芸術というものは往々にして答えの存在しないものだが、だが一つ確かに言えることがあるとすれば、想像を続ける限りそれが新たな正解となっていく、ということだろう。きっと、西洋音楽の大家も同じように、常に新しいものを想像し創造し続けてきたはずだ。私もそれがしたい。
今回は比較的ポップなコンセプトであったが、paletteを通じて芸術をきっかけに、自分の生活に何か立ち止まる瞬間や、動き出すきっかけの一部となっていればこれ以上の幸せはないと思っている。
そしてこれからも、(断じて私が主役になる必要はないが)誰かの豊かさの一部として私の音楽が使役されることを願い、paletteの感想としよう。
ご来場くださった皆様、およびくださったcafe音と友にの皆様、共演してくれたみっつー、この本番に向けて暖かい応援の言葉をかけてくれた友人・家族・お世話になっている皆様に深く感謝を申し上げます。
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